「日常ー学び」では日ごろの子どもたちの行動や発言から学ぶことや、ちょっとクスっと笑える日常の会話まで、息抜きになるようなお話も書けたらと思います。
次女がASDと診断されたころの話です。
祖母にはASDについて、簡単に説明をしてまだ間もない頃、次女の反応で祖母がショックを受けたことがありました。
その日は待ちに待った習い事での遠足イベントの日でした。
長女も同じ習い事をしていたため、姉妹でそろって参加できるということもあり、二人ともとても楽しみにしていました。
祖母は二人の楽しむ姿を想像して、イベントの費用を出してくれました。そうやって祖母は孫たちがそのイベントへ行くことを一緒に楽しみにしてくれていて、どんなに楽しい顔が見られるのだろうと帰りも迎えに行ってくれたのですが…。
帰ってきた次女の口からは、なんと、楽しいのたの字も出てこないどころか、終始愚図りながらの帰宅になったのです。
自分の感情状態がわからないASD

当時は祖母にもASDについて私が得た知識の範囲内で説明はしていましたが、思考のとらえ方や表現の乏しさ、不安の大きさ、ストレスの多さがどういった影響を及ぼすか、など、具体的な説明は複雑すぎて、なかなか難しく、また、次女自身も自分の感情がよくわかっていないだろうことや、当然それを表現することが難しいこと、周囲の雰囲気をつかむことが苦手であることなど、説明しても急に伝わるようなことではなく、まだまだ次女への理解は得られていない状態でした。
そもそも、専門医でさえ判断の難しいとされる一人ひとり違う複雑な発達障害の症状を、素人が口頭のみで伝えるのはあまりに難解なことです。
私自身も、まだ次女については、何となくこういう状態が起こるな?こんな状態なのかな?と自分なりに想像を巡らせるくらいで、それを論理的、具体的に説明できるような知識も今よりもっとない状態でした。
そんなわけで、気分が沈んだ祖母と帰ってきた子どもたち。
先述の通り、次女は愚図って機嫌が悪くすらありました。
それを見た私は、次女が楽しかったけれど、大人数での親のいない遠足イベントにそれなりのストレスと疲労感が出てしまっていること、それを本人がわからずに愚図ってしまっていることを察しました。
普通に考えて、家族間であっても、遠出していつもと違うところへ遊びに行くとなると疲れると思います。ましてや、初めての変化や人と接することが苦手なタイプであったなら、楽しくても想像以上に変化の影響を大きく受けてしまう。つまり大きなストレスがかかってしまうと思います。
この時は確かまだ1年生の次女ですが、日常の中でも自分の感情も理解することが難しく、本当に怒ってばかり、愚図ってばかりでした。
これを書いている今は3年生ですが、最近は自分の感情もずいぶんわかるようになって、少しずつ言葉にできるようになってきていることを思うと、予想しなかったくらいハイペースでの成長で驚きます。

それもこれも、発達障害に気づいたこと、そして療育が次女に合っていたことがとてもよかったのだと思っています。

話は少しそれましたが、その時の私はまず、次女が自身の感情に気づいているのかを確認しようと思いました。私が次女に、自分は疲れていると思っているのか確認してみると、次女は(いつもの通り)反対のことを繰り返します。
はは「疲れたね~?」
次女「疲れてない!!」
やはり次女は、自分でも自分の状態がわかっていない様子でした。
だって、「疲れてない!!」といった次女は帰ってくるなり無言で私に抱き着き、疲れてないと言った今もゴロゴログダグダ私の膝の上で転げているのですから。
というわけで、私は次女の背中を撫でながら「それは疲れてるって言うんだと思うよ~?」と言ってみました。
次女「疲れてないもん!!」
その場ですぐには受け入れてもらえませんでしたが、とりあえず、感情を理解するヒントになればいいかなくらいにして、その場で祖母には次女の状態を具体的に説明をしました。
はは 「たぶん、とても楽しかったけど、疲れたのと、慣れない場所と環境にいたことの負荷がかかってるんだと思う。自分の気持ちがどういう状況か自分で把握できてなくて不安になって愚図ってしまってるだけだと思うよ。ちゃんと楽しかったから大丈夫だと思う。時間がたって、もう一度訊いたら楽しいって言うと思うよ。」
祖母「そうかな~」
半信半疑で心配をする祖母の気持ちを取り残して、その時は終わりました。

その後、次女が落ち着いたタイミングを見計らって、何気なく
「今日のイベントどうだった?」と聞くと、ご機嫌で
「楽しかったー!!」と答えてくれたのでした。
それを祖母に伝えて、祖母も一安心。一件落着しました。
ASDについて具体的な説明ができるきっかけになった出来事でした。
初めてに弱いASDと外では耐える気力がすごい次女
発達障害をもつ人の中でも、特にASDタイプをもつ人は不安が強いことで急な予定変更やはじめてのことに多大なストレスや不安をもちやすいと聞きます。
今回の次女を見た時も、それがとても顕著に出たのだなと思いました。
イベントは姉と一緒だったために、次女もある程度楽しみにして行けました。
さらに、この時の次女は姉が経験したことは当たり前に自分もするものだと思い込んでいたようだったので(これは兄弟あるあるですかね?)それも後押しして楽しみにできたし、実際楽しめたとは思いますが、初めてへの恐怖や不安も人一倍感じられてしまう次女にとってはかなりハードルの高いことは違いなかったと思います。
実際に行くと、その他大勢の子どもたちがいたり、いろんな大人がいて、初めての場所、環境で、親もいないという状況に人一倍のストレスを感じるのはごく自然なことのように思いました。
また、次女は外では常識的にふるまうことがある意味こだわりのように私には見えていて、両親がいない場などでは常識的にふるまうことをとても頑張ろうとするように感じます。
ある一方では不安に弱く、ある一方では不安に耐える忍耐がとてもある。
複雑なようですが、発達障害の人は場の空気や常識が全くわからないのではなく、むしろ不安に敏感なところがあるためそれらを必要以上に大きく感じ取ってしまうように私には見えます。
けれど自他境界のあいまいさなどを抱えるためにその感じ取ったものを具体的に”自分の不安感”だとつかみきれなくて、何となくの違和感にさらされてしまう。その為にまたなんとなくの不安を抱えやすく、ある方面ではそれを払しょくしようとする一時的な忍耐が、人一倍育ってしまう。それがさらなるストレスの悪循環になりやすい。という面があるのではないかと感じています。
ASDは他人や自分の感情が”わからない”のではなく”つながらない”
今回、祖母をがっかりさせてしまった要因は、次女が初めてのイベントに不安やストレスを感じた結果、ひどく疲れてしまったということ、そして、帰ってきて「楽しい!」を表現できないほどに疲れてしまったその感情が次女自身も何か理解できず、その不快感、不安感から愚図ってしまったことにあると思います。一般的には”楽しければ楽しいとすぐに表現できることが当たり前だ”という感覚が大前提にあると思うので、理解しがたいですよね。
何度も言いますが、いわゆる一般的とされる脳状態では自然に気づくことのできる自分の感情の認識が、自他境界のあいまいさなどで育ちにくく、ASDの子にとっては”得体のしれないもの”で不安になりやすく、自分が抱えているものが楽しい感情と不安な感情、また、ストレスを受けて疲れたという状態だと気づくことが難しいことがあるのだと感じています。
つまり、”感情がわからない”というより混在している感情を一つ一つ取り出すことが苦手で特定の感情に”つながらない”
その為、もやもやに対処ができずに不安として出てしまう(愚図る、怒るなど)
実際、これは次女を見ていて日常的に感じることです。
対処法は感情の学習
何となく違和感を抱えて生きることが多くなる発達障害の人は、感情がわからないのではなくつながらないことで自分の感情の処理や他人とのコミュニケーションがしづらくなっているなと、そばで見ていても思うことが多いです。
なので、それはこういう感情じゃないか?とか、こういった思いなのかな?とその子の感情の状態を聞き出したリ、感じたりして、周囲がその状況を表す言葉のヒントを少しずつ与えていってあげることが必要なのだと思います。
もちろん、その感情を抱えているのは次女自身なので、それが周囲から見たもの、感じたものと完全に同じになるかというとそうではないかもしれませんが、表現方法、語彙の少ない今必要なことは、本人が感情の状態を何となくでも把握できる練習と、それを表現できる語彙を集めることで、自分でもだんだんとどういった感情がどういうもので、どういえば人に伝わるのだと考えていけるようになるか、そのためのサポートだと思います。
いわゆる、療育でしていることがそのためのものなのですが、大切なわが子と日常を過ごす親として、日常的に細かく何をどう意識してもらうためにどんなヒントを伝えてあげたらいいのかについて、私なりに言葉にまとめてみました。
現在、3年生で、放課後デイサービス(療育の一つ)へ行っている次女は、まだまだ感情の表現が乏しかったり、知っている言語で表現した結果、選ぶ語彙が違っていて誤解をよんだり、ということがたくさんあります。
けれど、何かを表現して、伝えようとしてくれる気持ちが育ってきてくれていることで、「そういう感情ならこうやって言うんじゃないかな?」とか、こちらもそれを表現する言葉を伝えてあげることも出来てきていると思っています。
”わからない”わけではないことに周囲が視線を向けて、その子にあった方法を見つけることで、少しずつ、自分で社会生活をするときのためのヒントを積み上げていってもらえばと思います。
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